読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

昔の若者は新聞を読んでいたのか

メディア

f:id:kaiteki61:20111115210750j:image

「若者の新聞ばなれ」みたいなことが言われています.
ここでその要因とされていることは,以下のようなものです.

1. ニュースはネットやケータイで見る
2. 定期購読は高い
3. たまると捨てるのが面倒
4. 親父の世代のもの
5. 難しそう
6. どの新聞も同じに見える
7. 読むのに時間がかかる
8. 持ち歩くのにかさばる
9. 仕事に役立つかどうか分からない

第61回:若者に見捨てられた新聞に未来はないのか?:日経ビジネスオンライン

なんか,もっと根本的な要因があるんじゃないのかなとおもいました.昔から新聞は若年層に読まれていなかったんじゃないかとおもいました.

日本ではここ数十年で「世帯」の形態が変化してきました.いまはいわゆる「核家族化」が進行した(成熟した)社会で,1世帯あたりの人数が少ない社会です.1世帯あたりの新聞の読者数が減少するので,回読人数が減少します.

f:id:kaiteki61:20111101023414p:image
f:id:kaiteki61:20111101023415p:image
f:id:kaiteki61:20111101023416p:image

統計局ホームページ/国勢調査からわかったこと
厚生労働省:平成18年 国民生活基礎調査の概況
新聞の発行部数と世帯数の推移

以下は本格的に推測なのですが,もともと以前から新聞は40歳以上で夫婦と子どもひとり以上の人数で構成されるような世帯で読まれていたのであり,新聞を実際に読んでいたのは世帯内の親・祖父母世代だけであって,世帯内の若年者は以前からさほど新聞を読んではいなかったのではないでしょうか.

現在では核家族化や晩婚化,子どもをもたない世帯の増加により,若年者を含まない世帯や若年層だけの世帯が多いです.そのため,かつては世帯内の親・祖父母世代が新聞の購読契約をしていたために,実際には新聞を読んでいないのに新聞を購読していると見なされていた若年層が,現在までに,個別の世帯として分離するようになってきた.これは新聞購読契約の対象となる世帯数の拡大を意味するので,現象としては,実際には新聞を読んでいなかった若年層の存在が世帯数として可視化されているだけなのではないでしょうか.あるいは,発行部数も減少している(らしい)点も考え合わせると,近年になって新聞を読まなくなったのは若年層ではなく中高年なのでは,とも推測できます.

そもそも具体的に,まだ大卒がエリート扱いされる一方で多くは単純労働に従事していた高度成長期の20代と間口の広くなった大学でそれなりに高度な教育を多くの人が受けて円高による豊かな経済を享受できる現在の20代とを比較して,前者のほうが多く新聞を読んでいたとは,感覚的に考えにくいところがあります.

Benesse発2010年「子どもの教育を考える」 -特集 - 新しい時代における学力を考える

もちろん新聞業界の斜陽化の要因を考えるうえで,インターネットの影響や娯楽の多様化といった側面は無視できないし,実際に若年層のあいだで新聞に対する考え方は変わってきているのだろうとおもいます.あるいは今回の記事は主張内容に対してデータが乏しすぎるし,上に書いたような考えは全面的に間違ってるのかもしれません(発行部数の減少も,単に「読まれなくなったから減少した」と解釈するのは安易におもいます).

しかし,新聞産業の斜陽化を,たとえばソーシャルメディアのような,社会全体の構造からみて非常にささいなことがらから説明しようとする言説に出会うと,それはちょっと冷静になれっていう気持ちになります.実際には今回の人口動態の構造変化というような,数十年の単位で見るべき国家全体のレベルの事象から要因を考えるものなんじゃないかなとおもいました.